11月 仲代達矢さん

2025年11月

11月8日、俳優の仲代達矢さんがご逝去されました。享年92歳でした。

私は今年の5月、能登演劇堂で上演された舞台「肝っ玉おっ母とこどもたち」を観に行きました。その時が仲代さんのお姿を拝見する最後となりました。この作品は、戦地を幌馬車で移動しながら軍隊を相手に商いをし、3人の子供を育てる逞しい母親=女商人を描いた演劇です。

能登の震災からの復興、そして世界各地で続く戦争を止めたいという願いが込められた舞台だったと思います。

2015年に公開された映画『NORIN TEN』では、ナラ工業も製作に関わらせていただき、仲代さんと一度だけ食事をご一緒する機会をいただきました。この映画は、ナラ工業が北陸に進出するきっかけとなった「稲塚権次郎」の生涯を描いた作品です。

100年前の米騒動、世界情勢の不安、そして太平洋戦争へ向かう時代を生き抜き、日本の食を守るために人生を捧げた稲塚権次郎の姿が描かれています。公開から10年が経ち、令和の「米騒動」とも言える状況の中で改めて観ると、国家の流れに翻弄されながらも信念を貫いた1人の人間の生き様が胸に迫ります。ぜひ、今もう一度多くの方に見ていただきたい映画です。

仲代達矢さんも徹底した「反戦」の信念を持たれた方でした。戦時中、友人宅の帰り道で出会った少女と共に逃げる途中、B29の焼夷弾が落ちました。気づくと自分が握っていたのはその少女の腕だけだったーーー。仲代さんはこの経験を胸に「能登の舞台で最後まで精一杯演じ切ること。それが”戦争”というものに対して、今の私にできることだと思っています。」と語っておられました。(『歴史街道』2025年7月号より)

心より、仲代達矢さんのご冥福をお祈り申し上げます。